バンダイ 1/72 VF-1J バドロイドバルキリー 仮組みレビュー            トップページに戻る



バンダイ(旧イマイ) 1/72 VF-1J バドロイド・バルキリー 定価 1050円  

 このバンダイの1/72バドロイド・バルキリーは、超時空要塞マクロスのアニメが放送していた1982年にイマイから発売されていた古いキットで、その後、イマイ倒産時にバンダイに金型が引き継がれ、現在は数年おきに細々とバンダイから再販されています。

 30年前の1980年にバンダイのガンダムシリーズが大ヒットした際、少し遅れて展開されたアオシマのイデオンシリーズもヒット。おこぼれ(笑)で有井のザ・アニメージシリーズまで売り上げを伸ばすほどで、一大ロボットプラモブームとなりました。こういうブームになると他社も一斉に類似商品を乱発するのが当時の模型業界の常で、次々とガンダムの相乗り企画が立ち上がる事になります。

 そんなリアルロボットアニメの一つが「超時空要塞マクロス」で、 ガンダムより三年後の1982年秋にアニメと玩具・プラモシリーズの展開が開始されました。マクロスのプラモ展開は他のアニメと異なり、イマイ科学と有井製作所という二つのメーカーが共同で手がける事になります。
 ところが、イマイとアリイはキットの作風にかなり差があり、当時のバンダイより綺麗なモールドのカチッとしたイマイ製のキットと、アニメージ譲りの大甘な出来のアリイ製キット(たまに良作も混じるけど)との落差が極端で、まるっきり統一感の無いプラモシリーズになっていました。
  あと、マクロスのプラモシリーズは、当初バルキリーよりもデストロイドをメインとしたラインナップになっていて、ガンダムやダグラムの様に陸戦型のロボットをメインに売るつもりだったらしいのですが、アニメ劇中ではバルキリーばかりが活躍するシーンが多く、プラモデルもバルキリーをメインにした商品構成に移っていく事になります。

 今回取り上げる1/72バルキリーは、マクロスシリーズで最初に発売された第一弾キットの一つ。最初は可変タイプやファイタータイプなどは無く、バルキリーは非変形のアリイ製1/100とイマイ製1/72のバドロイドのみでした。
 アリイもイマイも、当初はロボット中心で売るつもりだったため、バルキリーのプロポーションもがっしりした逞しいアレンジでまとめられています。後世のバルキリーとイメージが異なっていて、黎明期らしい試行錯誤の跡が見られる部分です。


 旧イマイ/バンダイ版1/72バルキリーのパーツ写真。
 元が1982年のキットなので、パーツ分割は旧ファーストガンプラと大差ないシンプルさ。当時は700円でした。
 当時のイマイは昔のバンダイよりも彫刻が優れたキットが多く、このバルキリーも古いの割にはかちっとした清潔感のあるモールドです。あと、イマイキットの700円サイズキットには透明パーツが付属している事が多く、このキットもカメラアイやライト部分がクリア成形。一方、イマイは当時導入が始められたポリキャップの採用には消極的で、このキットもポリキャップは使用されていません。

 なお、このキットは発売がバンダイに移る際に金型改修が行われており、胸部と機首(バドロイド時に股間になる部分)、あと両手首のパーツがイマイ時代とは異なっています。機体各部の特徴的なマルイチマークもバンダイ時代にモールドが追加された物。
 デカールは、イマイ時代と同じ図柄のシートに加えて、バンダイ時代に追加された細長いもう一枚のシートが付属。両方とも水転写式です。

 1/72バルキリーのパーツを組んだ所。
 なかなかカッコいいプロポーションで、、、。発売当時はちょっとガッシリし過ぎという印象を持っていたのですが、30年が過ぎてバルキリー自体のイメージが薄れると、これはこれで非常に良く出来た立体物ではないか、と思えてきます。スマートさと力強さを兼ね備えた絶妙なアレンジ。
 胴体部分はバンダイ時代に改修された物ですが、違和感無くまとまっており、上下に長く無骨だったイマイ時代の胸部よりも大幅に見た目は向上しています。

 30年前のキットなので、現在のロボットプラモとは比べるまでも無い可動範囲ですが、当時としては良く動く部類です。ただ、ポリキャップが無いので可動部分はあまりスムーズに動きません。
 ロボットプラモブーム時代の中では中期頃に発売されたキットのため、他社が初期に試行錯誤したギミックが取り入れられており、股関節がハの字に開いたり、足首がスイングしたりして、黎明期のガンプラよりは進歩した設計になっています。太股の中央に回転部分があり、足を少しガニマタ状に開く事が出来るのもポイント。

 頭部カメラアイと肩のサーチライトにはクリアパーツが使用されています。これだけでも当時のキャラプラモでは高級感がありました。
 VF-1Jの頭部はイマイ時代からこの形状ですが、非常にシャープなイケメン(?)顔。数あるJ型ヘッドの中でも一番カッコいいかも知れません。首は若干ですが前後にスイングし、二門のレーザー砲も可動式。

 
 手持ち武装のガンポッド。航空機に装備されたバルカンポッドがそのまま手持ち武器になるという合理的なデザイン。モールドは今見てもそこそこシャープです。肩にかけるベルトはキットには付属していないので、適当な薄いシートなどから自作して追加するといいでしょう。

 一方、バンダイ時代に新造された手首はイマイチの出来。しかし、イマイ時代はもっと巨大なゲンコツ状の手首で、とても変形時に収納出来そうに無い代物でした。


 何故か背面に付けられていた主翼の展開ギミック。F-14などのプラモデルに良くあるギアを介した連動ギミックで展開します。
 ただ、バドロイド稿の設定画を参考にしたため、情けないほど短い主翼はちょっと失笑してしまう可愛らしさ。ここは素直に閉じていた方がいいでしょう。



 何枚かアングルを変えて適当に撮影。
 今見ると本当にスマートで格好よいロボットで、当時不評だったのが逆に不憫になるほど。部分的にゴツ過ぎる箇所を修正すれば、現代でも十二分に通用するスタイルで、当時のイマイの設計者のデッサン力は見事なものがあります。



 近いサイズの1/100MGジムVer1との比較。バルキリーの1/72はだいたいガンダムの1/100と同じ位の17cmサイズです。
 なんか、並べてみるとMGジムVer1とアレンジのタッチが似ているのは気のせいか。

 バンダイに引き継がれた旧イマイのバルキリーは、当時のイマイキットの質の高さを感じさせる名作で、後年にハセガワから出たVF-1とはまた異なった魅力があります。
 マクロスの放映当時はヒーロー的過ぎるアレンジが嫌われたイマイ1/72でしたが、現代ではむしろ解釈の一つとして受け入れられても良いのではないか、と。個人的にも今回数十年ぶりに組んでみて印象を改めました。お勧めのキットです。