バンダイ HGUC 1/144 ジム寒冷地仕様 仮組みレビュー            トップページに戻る



バンダイ HGUC 1/144 ジム寒冷地仕様 定価 840円  

 本キットは2003年発売。当時はHGUCでOVAの0080シリーズに登場するモビルスーツを立て続けに発売していて、その一環としてこのキットも発売されました。

 ガンダム十周年に当たる1989年にOVAとして発売された「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」は、ガンダムの一年戦争当時のアナザーストーリーを戦争映画風にリアルに描いたストーリーで、物語が主にジオン側の兵士の視点で描かれているのも特徴。

 劇中に登場するモビルスーツはファーストのアニメ版の設定ではなく、出淵氏によってリファインされ直した新規設定の画稿が使用されています。
 当初の設定では、これらのモビルスーツは「ファーストのアニメに登場したザクやジムと同じ物」という解釈で描かれていましたが、あまりに元デザインとかけ離れていたため、1989年に最初にプラモ化された際に「0080に登場したMSは、ファーストに登場したMSの後期生産型である」という後付けの設定が加わりました。
 その後も、ガンダム0083や08小隊などのOVAが作られた際に、そのつど別のデザインのジムやザクが何度も新規デザインを起こされたため、モビルスーツバリエーションは無秩序に数を増やしていってしまう事になります。
 
 私はOVA関係はあまり真剣に見てなかったので、後にゲームの「ギレンの野望」を プレイした際に、「なんでこんなにジムやザクの種類があるんだ!?」と困惑した思い出があります。
 ファースト〜MSVまでの世代だと、ジムなら通常型とジムキャノン、ジムスナイパーの三種類程度で済んでいたので、寒冷地型やら陸戦型やら水中型やらが、うじゃうじゃと開発スケジュールに並んだ時はちょっと混乱、、、。あわててネットで各バリエーションの出典を調べたものです。OVAやゲーム、雑誌展開などで発表されたMSVを闇鍋の様に突っ込んだギレンの野望はかなりカオス状態で、それなりのガンオタでないとついて行くのは大変でしょうねえ。

 話が前後しましたが、この寒冷地用ジムは0080の第一話に登場し、北極の連邦軍基地に配備されて、ズゴックやゴッグを駆って基地に急襲を仕掛けたサイクロプス隊と激戦を繰り広げます。、、、、とは言っても、このOVAの連邦軍は一貫してやられ役で、この寒冷地ジムも劇中ではあまり目立ったシーンはありません。登場も一話の冒頭シーンのみというチョイ役(もっとも、他の連邦MSもほとんどチョイ役)で、キット化したのが奇跡の様な、地味なGMバリエーションの一体です。 



 1/144寒冷地用ジムのパーツ写真。HGUCジムとよく似た構成で、かなりパーツ数は少ないシンプルな構成です。間接可動にはあまり凝らないHGUC初期の設計に近いつくり。ABS樹脂パーツは間接の一部や武器パーツなどに使用。カメラアイはクリアパーツになっています。 
 なお、一見すると寒冷地用ジムはHGUCジムコマンドの一部パー変えのキットに見えますが、実際には装甲板の細かなモールドの違いを再現するため、パーツの大半は寒冷地用ジム専用の物が新たに起こされています。ライトグレーのパーツは丸々新規で、ジムコマンドと共通しているのは上半身と足首のスリッパ部分程度。意外に細かい部分にこだわったつくりになっています。

 寒冷地用ジムのパーツを組んでみた所。
 ガンプラらしからぬ地味な配色のキットで、デザインもさっぱりしているので非常にシンプル。無個性かつ単なるやられ役という、寒冷地用ジムのイメージをよく再現しています。こういう端役MSがキット化されるのはHGUCシリーズならではで。
 寒冷地仕様とはなっていますが、外観上は特に防氷装備や雪上装備などは見られないので、単なる大気圏内で使用する地上用ジムと考えてもいいかも。
 
 出淵氏のデザイン画と比べると、全体に手足が太めで逆に上半身のボリュームが小さいという、結構強いアレンジが施されています。ただ、出淵デザイン画はモビルスーツ的な体型から少し離れている印象があり、それを穏当なガンプラ体型に直したのがHGUC版と言えるかと。
 立体としてのバランスは取れているので、個人的にはこのHGUC版はそんなに悪くないプロポーションだと思います。


 このキットは可動範囲はそれほど広くなく、肩は単純な棒ジョイントでスイング機構などはなく、股関節も足首もあまり動きません。ただ、ヒザは二重間接で90度以上曲がります。
 最近のHGUCと比べると物足りない可動ですが、その分組み立ては非常に簡単で、価格も安いのでいちがいに欠点とも言えず。設定のジム同様、量産性を優先した必要最小限のパーツ構成と言えるかも。
 ヒジ間接には何故かABSパーツが使用されていますが、この部分に関してはさほど問題は無く、強度も十分です。

 オプションパーツの類はほとんど付属しないキットですが、なかなか出来の良い左の平手が付属。
 一方、ビームサーベルはジムコマンドと同様の、手首とサーベルが一体成形された物が付属。これが意外とモールドがリアルで出来が良いのですが、塗装しないと様にならないので、素組みの人には少し残念なパーツかも。

 マシンガンは丸々ABS製。ちょっとやっかいな材質ですが、この程度のサイズなら瞬間接着剤で接着すれば合わせ目を消す工作も可能でしょう。
 それより問題なのが、デザイン上仕方が無いとはいえ、銃のストック部分が腕にぶつかってきちんと構えられない点。ここは、大胆に後ろの出っ張り部分を切り取ってしまうと良いです。銃の形は少しカッコ悪くなりますが、格段に構えやすくなります。

 兄弟機とも言えるジムコマンド宇宙用(作例は塗装済み)との比較写真。
 ボディ部分はほとんど同一ですが、頭部やシールドの形状が異なるので、意外と印象が変わって見えます。


 こちらはTV版の元祖ジムとの比較。
 やや寒冷地用の方が細身でスマートですが、並べて飾ってもまずまず違和感が無い程度に抑えられています。HGUCジムと同系列のMSに見せるためのアレンジだという事が良くわかります。

 この寒冷地用ジムは、最近の派手なスパロボガンダムとは対極にある地味〜なモデルですが、こういうMSが結構定番キットになっていたりするのがガンプラの層の厚さを感じさせます。とにかくすぐに組み立てられるシンプルな内容なので、入門用にも改造ベースにも最適なお勧めキットです。