バンダイ 1/144 ザクデザートタイプ 仮組みレビュー                      トップページに戻る


 バンダイ 1/144 ザクデザートタイプ 定価525円 発売 1983年  

 1980年に発売されて爆発的なブームを築き上げたバンダイの機動戦士ガンダム・プラモデルシリーズは、TVに登場するモビルスーツを全て発売し切っても収まらず、その後もジャブロー水中MS4種や、モビルアーマー、戦艦などのキットが発売されていました。

 そして、遂に出すアイテムが無くなったバンダイが次に企画したのが「モビルスーツバリエーション」シリーズです。
 通称MSVと言われるこのシリーズは、ガンダムのデザイナーを担当した大河原氏が、放送直後からアニメ雑誌のムック本などに寄稿していたイラスト類を基にして、ザクやガンダム、GMなどのバリエーションをプラモデルで立体化していくものでした。
 MSVの設定を起こしたのは、ガンプラブームの立役者の一人と言われる小田雅弘氏で、現実の兵器の開発エピソードを下地にした、TVとは異なるミリタリー色の強い世界観を構築しました。この時のMSVの世界観が、その後のガンダムワールドの方向性に大きく影響を与える事になります。

 MSVのデザインは、プラモ企画以前に大河原氏が起こしていた画稿と、プラモ化の際に新たに起こされたデザインのものが混在していますが、このデザートザクはプラモ企画以前の初期に描かれた物で、MSVの始祖とも言える一体です。
 デザインの基本ラインはザクを基にしていますが、機体の各部が角張ったデザインで、細部のディテールなどはむしろダグラムのCBアーマーを思わせる物になっています。MSとCBアーマー折衷型の様なデザインはこの時期の大河原氏の特長で、MSVモビルスーツは同様の雰囲気を持つデザインが多いです。



 ザクデザートタイプのパーツ写真。大き目のランナーが二枚で、びっしりと隙間無くパーツが配置されています。
パーツ数は、ファースト時のキットに比べるとかなり多く、良く500円で収まったという内容。

 MSVシリーズのキットは設定的にはミリタリー色の強い物でしたが、実はキット内容は今ひとつ芳しくなくて、モールドも甘くて当時購入した時は
かなり失望した記憶があります。
 前作ザブングルシリーズ並の精密なモールドのキットを期待したのですが、精密さという点でははるかに後退していたのが事実です。もっとも、
現在のバンダイキットでもザブングルシリーズを超えている物は無いのですが。

 しかし、その芳しくないキット群の中にあって、異彩を放っていたのがこのザクデザートタイプで。
 だるいモールドのキットが多かった初期MSVの中では例外的にシャープなモールドで、かっちりとした角の線が気持ちい。ランドセルの放熱フィン
などのモールドはウォーカーマシンのキットを思わせる緻密さです。
 MSVの初期発売キットの中では、このデザートザクとプロトタイプドムが飛びぬけてレベルの高い内容でした。


 パーツを組んだ状態。
 1983年のキットにしては、妙にスマートでカッコいいのが分かります。足が細くて長い。肩幅が広めで腕が太いのは他のMSVキットと同様ですが、これはこれで力強さがあって悪くない。足首の形状がなかなかいい感じ。
 現代の目から見ると甘く感じる部分もありますが、かっちりとしたモールドは昔のガンプラらしからぬすっきり感があります。 


 可動についてもこのキットは他のMSVキットと違っていて、膝部分に回転軸があるため、この時期のキットとしてはめずらしくガニマタポーズが可能です。両足首の向きをハの字に向けられるので、設定画のポーズが無改造で可能なのは意外と大きい。
 肩部分は旧ザクから引き継ぐ前後スイング構造があるので、マシンガンを自然に両腕で構える事も可能。この辺の可動は、ポリキャップこそ無いものの、初期のHGUCキットとあまり変わりません。


 腰に装備されたグレネードラックの開閉ギミック。

 付属する武器類を集めた所。なかなかおまけも多くて、その点でも楽しめるキットです。 

 オプションで選択できるダブルタイプのアンテナ。頭部形状は独特の解釈で、元のザクとはかなり異なっていますが、大河原テイストが強い面白い形状。


 長所ばかり書くのは何なので、欠点も。手のひらの裏側はご覧の通り大胆すぎる軽め穴がぽっかりと。MSVキットでは良くある仕様。
 あと、部品のはめ合わせなどはやっぱり昔のキットなので、お世辞にも良くは無いです。細かいバリも多いので、丁寧な成形が必要。

 同時期のMSVザク・マインレーヤーとの比較。上半身は似たような感じですが、足のスマートさが目立ちます。

 今度はHGUCザクとの比較。
 なんと、HGUC版より足が長かったり。その分ちょっと腰高になっていますが、胴体のボリュームがあるのであまり貧弱な印象はありません。
デザートザクは胴体がやや上下に押しつぶされている感じですが、腰を伸ばすとオーバースケールになってしまうので、難しい所です。
頭部のサイズは、やっぱり昔のキットの方がしっくり来ますね。


 個人的には、当時からMSVシリーズでは一番気に入っていたキットで、現在見直しても考えは変わりませんでした。
今の目で見ると、やや肩幅の広さが気になりますが、これはこれで味かと。
 もう一度じっくり完成させてみたい名キットの一つと言えます。